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誰もが人生に囚われ,葛藤している… 街の雑踏に入り乱れる残酷な現実「クロッシング」!!

基本情報

原題:Brooklyn'sFinest

製作年:2009年

監督:アントワーン・フークア

脚本:マイケル・C・マーティン

製作:ジョン・トンプソン,エリー・コーン,アヴィ・ラーナー,ジョン・ラングレイ他

主要製作スタジオ:ミレニアム・フィルムズ

製作国:アメリカ

登場人物

ベテラン麻薬取締捜査官"サル":イーサン・ホーク

ギャングに潜入中の特命捜査官"タンゴ":ドン・チードル

定年間近の所轄お巡り"エディ":リチャード・ギア

出所したギャングの幹部"キャズ":ウェズリー・スナイプス

クラレンスとの連結役"ビル":ウィル・パットン

エディがよく買う中華街の娼婦"シャンテル":シャノン・ケーン

サルと同じくマトリの"ロニー":ブライアン・F・オバーン

 

あらすじ

多くの子供を抱え、喘息で苦しむ妻を支えようとするも

金銭的な余裕が無い麻薬取締捜査官サル(イーサン・ホーク)

 

長引く潜入捜査で妻とも疎遠になり、自らも自棄に陥っている

"タンゴ"(ドン・チードル)

 

警官にも関わらず犯罪を避け続け、七日後には定年を迎える

エディ(リチャード・ギア)

 

彼らが身を置くブルックリン。

公営団地が立ち並ぶ猥雑な住宅街。

警官による強盗殺人事件。

 

決して交わる事の無い男達。

 

ひとつの事件。そして、ギャングの幹部

キャズ(ウェズリー・スナイプス)の出所。男達の運命は狂い始める。

レビュー『暗く黒い街並みの雑踏に雑じる、男たちの過酷なジレンマ』

オススメ強度:★★★★

アントワーン・フークア監督の乾き切った空気感は相変わらず健在。

通常の刑事ドラマでありがちな要素が一切排除され、

徹底して乾いた質感で、犯罪渦巻くブルックリンを表現しています。

 

登場人物がとにかく多いにも関わらず

スクリーンは、敢えてテレビのチャンネルを次々と切り替えるように

パッパッと矢継ぎ早にドラマを展開、進行。

フィクションではありますが、とにかく淡々とした描写は

どこかドキュメンタリータッチな印象もあります。

 

このザッピングを繰り返すような構成に対し、

「もっと丁寧に描写しろ!!」という方もいらっしゃるでしょうが、

そこが想像力を働かせる『遊び』でもあり、本作の泣き所でもあると思います。

 

サルがブツの取引現場に踏み込む場面はその最たる例で、

「現ナマだ!」と意気込んで取り押さえたアフリカ系のチンピラが、

実はオムツを運んでいただけと分かりブチギレるシーン等、

本作では「裏で実はこういったやりとりがあったのでは?」と

思わせる意味深な描写が大量に含まれています。

 

逆に刑事物の王道は一切含まれておりません。

サルやタンゴを映すなら、ブツの押収であったり潜入捜査中の様子を

もっとスタイリッシュで華やかに描きそうな物ですが、

本作では誰もかれもが泥臭く、息苦しい生活を強いられています。

コレ観てから昨今大量生産され続けている、刑事物の海外ドラマなんかを眺めると

その落差に唖然とします。

 

警官達の『交錯』を描いた群像劇と言えば

「L.A.コンフィデンシャル(L.A.confidential '97 米)」が大変著名ですが

荒らしの後の夜明けに、一応のケジメを垣間見たL.A.とは真逆で、

ブルックリンの夜はより一層暗く、葛藤し、孤独に闘い続ける男達へ

救いの手が差し伸べられる事はありません。

「トレイニング・デイ」後の「クロッシング」,BK公営団地345,ジレンマに苦しむ男達

子供の頃に視聴した際、ただ不気味で胸糞悪いだけだった

「ペット・セメタリー(Pet Sematary '89 米)」を

家庭を築き上げ大人になった後に観返し、父ルイスの行いに涙するように

この映画は視聴した時の年齢で、登場人物の印象がガラリと変化すると思います。

 

家族の為にと既に一線を越え、救いを求めて死に物狂いとなるサル。

そして、潜入中に捜査対象カサノバとの間に育まれた絆を選ぶか

それとも、自らのキャリアを選択するかで激しく揺れるタンゴ。

切羽詰まった心境とのっぴきならない状況に誰もが息を呑み、戦慄すると思います。

 

反対にリチャード・ギア演じるエディは完全に心が折れてます。

恐らくエディは少しでも首を突っ込むと

街の狂気に飲み込まれてしまう事を悟り、恐れたからでしょう。

実際に一日だけ一緒だった新人警官(ローガン・マーシャル=グリーン)と

後日惨たらしい再会を果たしています。

結局、彼の事なかれ主義は定年直前まで続きました。

 

ぶっちゃけると、ただお巡りの服だけ着てるオッサンといった風で

娼婦シャンテルとの逢瀬の最中も「もっとゆっくりやって...」とぼやいたり、

(かつてジュリア・ロバーツ演じたビビアンとは対照的な関係)

寝起きのロシアン・ルーレットも、実はシリンダーは空のままという

文字通りの『玉無し野郎』です。彼の本音は「未公開シーン」にて語られてます。

 

マイケル・C・マーティンは新進気鋭の脚本家で

ブルックリン大学で学んだ後、運送業者として働いていたそうです。

 

NY東部育ちで貧困区は身近な環境だったらしく、当時の情景や現在の貧民区を

取り巻く世相を、巧みにプロットへ落とし込んでいます。

膨大な情報量の脚本を手堅く緻密にまとめ上げたのは

御存じ「トレイニング・デイ」を手掛けたA・フークア監督。

「トレイニング・デイ」では飽くまで、善を信ずる新任査官ジェイク・ホイトが

思いがけず巨悪と邂逅し、衝突する邪悪なドラマでしたが、

本作のサル、クラレンス、エディが、それぞれ立たされた状況は

いずれホイトが街との闘争の後に辿り着く、成れの果てのようにも見えます。

 

街に繰り出す警官たちは、犯罪にどこまでも汚染された住宅街の中で

次第に精神を擦り減らし、誰もが胸の中に闇を抱えています。

三人の男達が公営団地の路地で交錯する時、

歪んだ正義の末路が、遂に容赦無く暴かれます。

まとめ

原題「Blooklyn'sFinest」そして、邦題「クロッシング」。

二つのタイトルも凄く気に入りましたし、

先に掲載したポスターも両方とも凄く好きです。

 

アントワーン・フークア監督がこれまで描いて来たように

人々の狂気やエゴ、視点が複雑に入り乱れる濃厚なドラマです。

生々しい描写が多く、確かに万人受けこそしないものの

男達が日常に追いやられ、ただ孤独にもがき続ける姿に

きっと心揺れ動かされると思います。

 

サルとその家族、そしてロニー(ブライアン・F・オバーン)との会話は

とにかく悲しくて胸が張り裂けるかのようでした。

 

それとセル版にしか付属しない「未公開シーン」は必見。

エディの独白(しゃぶられながら)、キャズの語る「人生はパックマン」、

サルが妻アンジーの前でボロを露呈する場面等、

物語をより深く掘り下げるシーンが目白押しです!!

加えて二つのシークレットエンドもあります!

ある人物の意外なその後が描かれています。

 

視聴した後はどっと疲れますが、濃厚でシリアスなクライムサスペンスの名作です。

直接的な関係こそありませんが、

是非「トレイニング・デイ」と合わせて御覧下さい。

そして、過酷な環境で消耗し続ける現地の警官の皆さんへ

少しだけでも想いを馳せてみて下さい。

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