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今秋劇場公開作品を振り返る①~ダンケルク~

基本情報

原題:DUNKIRK

製作年:2016年

監督,脚本:クリストファー・ノーラン

製作主導:ラットパック・エンタテイメント,シンコピー,スタジオカナル,カープ・ホランド・フィルムズ,ドンビー・ストリート・プロダクション

製作国:イギリス,アメリカ,フランス,オランダ

『ダンケルク』の登場人物

ダンケルクビーチでただただ待ち続ける将兵たち

英国海軍中佐ボルトン:ケネス・ブラナー

英国陸軍大佐ウィナント:ジェームズ・ダーシー

英国軍二等兵:フィン・ホワイトヘッド

仏兵ギブソン:アネイリン・バーナード

船尾に取り残された英国兵:キリアン・マーフィ

英国空軍

ファリア:トム・ハーディ

コリンズ:ジャック・ロウデン

イギリスの市民たち

遊覧船船長のドーソンさん:マーク・ライランス

ドーソン家の次男ピーター:トム・グリン=カーニー

遊覧船に同乗したジョージ:バリー・コーガン

盲目の男:ジョン・ノーラン

『ダンケルク』のあらすじ

1940年、5月の終わり、フランス最北端。ドーバー海峡を臨む、ダンケルク。

この時、既にポーランド、デンマークを後手に追い込む程に強固だった

ゲルマンの攻勢を、連合側は未だ挫く事が出来ず、戦線はやせ続ける一方だった。

だが、独軍の牙はベルギー、フランスの防衛線を尚も喰い千切らんと躍起となる。

 

"本土決戦"の兆しすら、いよいよ現実味を帯びてきた戦況を前にして

英国軍は首相チャーチルに対し、『ダイナモ作戦』を説き、これを発令。

遂にダンケルクビーチから撤退が始まるが、浜辺の状況は尚も暗転し続けていた…

レビュー『最前線からの逃走劇をひたすら不気味に描くサバイバル戦争ホラー』

オススメ強度:★★★★

俳優としてのキャリアがほとんど無い、英国の若手無名若手俳優たち、

そして、数千人規模のエクストラを迎えてノーランが監督した暗黒戦史映画。

各国の劇場では冬映画ロードショーの際、本作の序幕五分間を予告編として上映。

日本の現状では鑑賞のハードルがキビしい物の、70mmIMAXの導入や

CGIを排し、極力実物を使った撮影。更にyoutubeトレイラーの視聴数が

世界的な記録を叩き出す等、以前より話題に事欠かなかった一作です。

音響がすさまじい効果で、冒頭の唐突すぎる襲撃シーンからグッと引き込まれます。

 

更に加えて作曲のハンス・ジマー、消沈する英国将校役にキリアン・マーフィ、

寡黙ながらも、冷静に仕事をこなす空軍エリートパイロット役にトム・ハーディ、

チョイ役ながら、とても印象的だった英国市民役でジョン・ノーラン叔父さん等、

最早いつメンと化した、ノーラン・ファミリーの活躍も煌めく仕上がり。 

 

実は本撮影が始まるより先に、全てのスコアを完成させていたという

時限爆弾の針のような、ハンス・ジマー氏の異様なサントラがとにかく強烈。

そしてキリアン・マーフィは、いつも以上にキリアンキリアンしてまして、そこも好印象。

精神的に不安定そうな男の表情の、なんとまぁ上手い事上手い事。

それと劇中で名前すら呼ばれない英国二等兵"トミー"役を演じた

やっとこさ二十歳になるという、フィン・ホワイトヘッド少年が絶妙過ぎました。

何がスゴいってルックスが平凡過ぎて全く顔の印象が残らない所。

観終わって劇場を後にしてから、コリンズ演じたジャック・ロウデン氏や

桟橋の軍幹部らの顔を思い出せても、トミーの場合は結構難しいと思います。

 

本作は、薄暗いダンケルクの陸、海、空の三方から襲い来る独軍の

無慈悲な猛攻に翻弄される兵士たちの視点がベースですが、 

驚く事に、台詞らしいセリフがほとんどありません。

本映画を製作するに当たり、ノーラン監督が直々にコメントしている通り

はじめから反戦とか平和とは?といった、王道なテーマも無ければ、

兵士ひとりひとりのドラマを映すつもりも無く(全く無い訳ではないですが…)

ホントにただただ次にくたばるのが誰か?そして誰が生き残るのか?

その様子を動乱する戦線と共に、とにかく淡々と描写しています。

 

この映画を構築する為、 監督は11本の映画を参考とし

更に無声映画への回帰も伺わせる本作を、監督は飽くまで「サスペンス」と

位置付けしてますが、個人的には「ホラー映画」な印象です。

とりわけ異様に感じる今作の特色が、二点。

ひとつは敵軍兵士の顔どころか、その容姿すら全く映らない事がまず一点、

そして戦争映画なのに、血の赤がスクリーンにちょびっとした滲まない点です。

 

男たちの大和を観た時、

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米軍の襲撃にだんだん耐えられなくなり、それまで整然としていた甲板が

文字通り大量の血を浴びて、この世の地獄と成り果てた瞬間も

確かに怖いと感じましたが、ビラが舞う市街を銃撃で薙ぎ払う冒頭の場面や

やっとこさ仕事を終えた駆逐艦に、無音で忍び寄るUボートの魚雷の場面、

忍び込んだ商船の土手っ腹に、次々と弾丸を浴びせる場面、

あるいは英国の攻撃機を軽くあしらい、轟音をまとってビーチに来襲する場面。

どのカットのどのシーンでも「やったか!?」とか「終わったか?」の瞬間、

唐突に攻勢へ転じる独軍は、その行動が気まぐれで全く予想がつかず、

しかも仕事は完璧かつ冷酷無比で、ビーチには大量の死体が浮かび上がります。

 

撤退を決めた兵らに容赦の無い独軍を眺める内、彼らが同じ人間とは到底思えず

何だか超常的で無機質な存在に映り、空を仰いで怯え続ける英国兵と同じく

不気味で予測不可能な独軍の猛攻に、ただただ震え、戦慄し続けた二時間でした。

『動』のブラック・ホーク・ダウンと『静』のダンケルク

なんとなくレビューを書いてる内、リドリー・スコット監督が手掛けた

ブラック・ホーク・ダウンが頭をよぎりました。

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時代こそ違えど、両作とも最前線の混沌に際限無く翻弄され続ける兵士達の顔を

徹底して描写しています。終わりの無い敵襲に、恐々となる兵士たち。

そして最後まで五体満足で生き残る者も居れば、戦地とは全く関係のない場所で

理不尽に事切れる命もあったりと、共通点も多い気がします。

(最もモガディシュを侵略した米兵らは、物資も豊富で徹底抗戦でしたが…)

ブラック・ホーク・ダウンの終盤にて、スタジアムに帰還したかと思いきや

再び踵を返すノーマン(エリック・バナ)を、マット(ジョシュ・ハートネット)が

問い詰める場面があり、「まだ終わらないのか…」と観てて呆れましたが

本作でフィンが、新聞から顔を上げるカットに同じ印象を抱きました。

 

しかしながら、戦争映画のアプローチとしてはまるで正反対です。

リドリー・スコット監督のブラック・ホーク・ダウンでは

怒号、爆音、とめどない流血等が、とにかく強烈な『動』の戦争映画でしたが

クリストファー・ノーラン監督のダンケルクでは

戦地を右往左往する兵士達の声は今にも消え入るかのようで、

耳を切り裂く轟音が響く戦地にも、静まり返る瞬間が訪れる様を描いています。

戦争を描いた映画は数多あれど、敵兵の姿も無ければ

血が噴き出るような描写も無く、でもそんな『静けさ』の中にあっても

戦争の恐怖や理不尽さを確かに描けるという事に驚きです。

 

以下、どうでもいい蛇足。

 

エンドクレジットを拝んだ後には怒涛の疲労感に苛まれ、放心状態でした。

今でも現地英国では、逆境から立ち直る気高い姿勢を

『ダンケルク・スピリッツ』なる言い回しで表現するそうですが、

観終わった瞬間、「やっと還って来た…もう勝ち負けなんてどーでもいいよ…」

そう思ったのは私だけでしょうか?

若干とっ散らかってますが、つまり何が言いたいのかと聞かれれば

平和が一番って事!

終わり!閉廷!

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