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「その後」を描いたタランティーノ渾身の西部残酷物語!!「ジャンゴ-繋がれざる者-」

基本情報

原題:DJANGO Unchained

製作年:2012年

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

製作:レジナルド・ハロリン,ステイシー・シェール,ピラー・サヴォン

製作主導スタジオ:ア・バンド・アパート,ワインスタイン・カンパニー

製作国:アメリカ

 

登場人物

ジャンゴ:ジェイミー・フォックス

Dr.キング・シュルツ:クリストフ・ヴァルツ

ジャンゴの妻ブリュンヒルダ:ケリー・ワシントン

農場主カービン・キャンディ:レオナルド・ディカプリオ

〃の使用人スティーヴン:サミュエル・L・ジャクソン

〃の追跡者:トム・サヴィーニ(!!)

アメリゴ:フランコ・ネロ(!!!)

 

あらすじ

奴隷に対する過酷な仕打ちが日常的に行われる南北戦争目前のアメリカ南部。

 

ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が奴隷商人に連れられ

売り捌かれようとしていた道中、

Dr.キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)なる男が現れる。

シュルツは見た所歯医者のようだが、その正体は敏腕の賞金稼ぎだった。

奴隷商人を容易くぶちのめし、ジャンゴをその場から連れ出すシュルツ。

 

シュルツは賞金首ブリトル三兄弟を探していた。

その為、兄弟達の素性を知るジャンゴの助けが必要だった。

旅を続ける内ジャンゴも次第に、賞金稼ぎの仕事に魅入られて行く。

 

ジャンゴに三兄弟を仕留めた後はどうするのか問うシュルツ。

すると彼は、生き別れとなった妻

ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を取り戻す為、

グリーンビル市に向かう事を告げる。

しかし、グリーンビル市を擁するミシシッピ州は

"黒人奴隷=nigger"に対する差別が特に根強く、危険な地域。

 

シュルツはジャンゴを諌め、

「冬の間に賞金稼ぎとして一緒に働く事」

を提案。更に

「充分に腕を磨いたら君の妻ヒルディを一緒に取り戻さないか?」

とジャンゴには思わぬ事を告げる。

 

ジャンゴは米国じゃ取るに足らない"nigger"の一人に過ぎない。

それなのに、何故そこまでするのかシュルツを問い詰めるジャンゴ。

ドイツからの移民である彼は奴隷制度に反対しており、

賞金首討伐の為、ジャンゴを連れて来た事に対して責任を感じていた。

 

I have,I feel vaguely responsible for you.

私は君に、いくらか責任を感じている。

Plus,When a GERMAN meets a real life Siegfried,

That's kind of a big deal.

それにドイツ人が本物の『英雄』に逢ったんだ。

それって大した事だと思わないかね?

 

Dr.キング・シュルツと"自由人"ジャンゴの奇妙な賞金稼ぎ二人組。

かくしてブルームヒルダ奪還の旅が始まった。

レビュー

オススメ強度:★★★★★

クエンティン・タランティーノ監督の稀有なバランス感覚が光る西部劇。

アメリカ開拓の歴史に隠れた暗黒面を描写する一方、

一大エンタメ映画として全体をドラマティックに引き締めています。

実際、3時間という時間が短く感じるぐらい濃厚です。

 

賞金首狩りをしながら、雄大な景色をバックに街から街への旅。

本物の馬を用いたホース・スタント・アクション。

血飛沫飛び散るガンファイト等々、

王道西部劇要素をこれでもかと詰め込みながら、

"nigger"が主役というブラックエクスプロイテイションの一面もあります。

 

マカロニ・ウェスタンに対する氏のリスペクトも、

多くある一方で、奴隷制で虐げられ続けたアフリカ系移民の

凄惨な歴史を辿るモンド映画的な側面もあり、

単なる娯楽作とも一味違って考えさせられます。

終盤、Dr.キング・シュルツとジャンゴが銃を抜くカタルシスが素晴らしい…

 

アフリカ系がチョイ役でなく

『主役』としてふん張る西部劇という斬新さも然る事乍ら

敢えてゴア描写を強め全面に押し出したプロットもまた骨太で、

一度視聴したら忘れられない程です。

本作を前篇と後篇に分けるなら、

第一部『Dr.とジャンゴの出逢い、そして一流賞金首への成長を描いた冒険』

第二部『狂気に取り憑かれた農場キャンディランドの決斗』

といった構成。

 

大農場での決斗×2へ向け、じわりじわりと緊張感を上げる

後半戦の構成力は流石の一言。

一度目の決斗の後、

「嗚呼…終わってしまった(´・ω・`)

と思ったら

「え?まだあるの!?ヤッタ━(゚∀゚)━!!」

と歓喜したのは私だけじゃないハズ(笑)その点もGoodですb

マカロニ・ウェスタンなら絶対あそこで終わってますからね!

 

そしてジャンゴが馬屋に訪れ

別れを告げる場面は喪失感が凄まじく、とても哀しかった(;ω;)

作品解説

2007年辺りからタラちゃんが温めていた「奴隷問題+西部劇」というアイディア。

しかし、

「デリケートでアメリカ映画史が避け続けてきた奴隷問題の描写」

「豊かな自然を背景にした西部冒険劇」

この二つを両立させる構想は、どうにもまとまらなかったらしく

プロジェクトが本格始動するのは、

イングロリアス・バスターズ完成以降となりました。

 

ジャンゴ役は当初、ウィル・スミス等にも打診されていたそうです。

本作で彼を演じたジェイミーは黒く大きな瞳が虚ろにも見え、

今まで数々の惨たらしい風景を見て来たであろう

ジャンゴという男により説得力を与えています。

 

ジークフリート伝説に耳を傾け、朗らかな顔を見せたりもしますが

全体的に寡黙で冷徹な印象のガンマン。

もっともこれはシュルツと設定した『枠』の影響でもありますが、

欲を言うなら更に色んな表情を劇中で観たかったかも…

 

そのDr.キング・シュルツを演じたのはイングロリアス・バスターズで

一躍有名となった変幻自在の名優クリストフ・ヴァルツ。

前作のハンス・ランダ大佐に引き続き、

今作で再びアカデミー助演男優賞を受賞しています!

 

彼はドイツ出身の賞金稼ぎ。

元々は歯医者だったものの5年前に今の職に転向したそうな。

賞金首の断定や手配書に余念が無いマメな性格に加え、

劇中に登場する急進過激派「レギュレイターズ」の夜襲を予想し

ダイナマイトでこれを撃退するなど、かなり周到な人物。

そして、様々な銃の扱いに長ける等、賞金稼ぎは天職だった模様。

西部おなじみの不意撃ちSleeveShotが印象的、かつケレン味溢れてて最高でした。

 

クリストフ氏の役どころはイングロ以上に飄々とした人物。

賞金首の討伐にも動じたり、気性を荒くする事もなく

奴隷のジャンゴにも優しく丁寧に接し、

愛馬フリッツに礼をさせ、その場を和ませるドイツ紳士。

ジャンゴ以上にセリフも多く、表情豊かに活き活きと演じております。

この映画はジャンゴの冒険のみならず、

米国南部の恐ろしい側面に迫るDr.キング・シュルツの視点も含まれています。

そして『枠』から遂に外れ、彼の憤りが爆発するシーンは本作の見所のひとつ。

 

前作で恐怖のユダヤ狩りをオハコとしていたハンス・ランダ大佐に

見事成りきったクリストフ氏が、今度は奴隷制度に反対し静かに怒れる

老賞金稼ぎDr.キング・シュルツを熱演したという点が面白いです。

助演男優賞を不服とする評価もある所を見るに、

それだけ今作のクリストフ氏に魅了された方も多いという事が分ります。

 

サントラではマカロニ・ウェスタンと言えばこの人と言って過言の無い、

エンニオ・モリコーネ先生作の名曲を多く引用。

本作の為の新譜もあります!

しかし、モリコーネ氏は常々暴力&ゴア表現嫌いを知られており、

流血沙汰がとにかく多い本作にも苦言を呈しています。

マカロニやジャッロの全盛時代も大概だったと思うんですけど…

 

驚愕したのが

ルイス・バカロフ氏(Luis Enriquez Bacalov)が手掛けた

"His name was king"

この曲、実はリチャード・ハリソンとクラウス・キンスキが主演した

マカロニ・ウェスタンからの引用でした。

御聞き頂ければ分かりますが、

すんごくキャッチーでとても1971年に創られた曲とは思えません(汗)

タラ映画ではKill-Billシリーズ等でも知られる彼。

そんな彼のかつて名曲が、劇中で印象的に持ち入れられたのは嬉しいですね。

 

また、西部劇でありながらアフリカ系のアーティストが多数参加。

勿論、ジェイミーも名を連ねています。

Rick Ross - "100 Black Coffins"

は先程と同じく本作の為に創られた一曲で、かなりパンチ効いてます。

劇中においてジャンゴが袖を通す服や外套、鞭を振り回すシーン等は

言わずと知れたかつての『ジャンゴ』フランコ・ネロ御大が

ベースとなっていると思われます。

そして、なんと劇中の高級クラブ「クレオパトラ」で御大自身がカメオ!!

二人のジャンゴが交錯します!

 「名前は?」と聞き、続けて綴りも尋ねた後"I know..."とだけ

超イカす低いヴォイスで答え、テキーラを傾ける場面がとにかく渋い!! 

 

実はカービン役としてのオファーもあったそうですが、

フランコ御大側で都合がつかず御破算に。

その代わりとして立てられたのが、

容姿が若き日の彼によく似たレオナルド・ディカプリオ氏です。

実際に若かりし頃の御大と見比べるとマジで似てますこの二人…

 

そして農場主カービン・キャンディ氏を演じたディカプリオ氏は

狂人染みた演技ぶりを披露。

niggerに対し、一切容赦の無い差別主義者として劇中に君臨します。

そして本作の中でも特に語り草になったのが、以下のアドリブ場面。

 

晩餐の最後にブチギレた挙句テーブルを叩いた際、勢いでグラスが割れ

手のひらがパックリ裂けるほどの切傷を負ってます。

通常なら手当をしそうな場面ですが、

現場はディカプリオ氏の流血もそのままに撮影を続行。

 

その傷を使用人スティーヴン(サミュエル・L・ジャクソン)に

まじまじと見せた挙句、ブルームヒルダ演じるケリー・ワシントンの顔に

そのまま血を塗りたくるという渾身のアドリブ!!!

続くシーンでは持ってたハンマーを卓上にぶん投げてますが、

クリストフ氏が思いがけずマジビビりしてますね(汗)

いやはやスゲーわ…この人…

 

本作ではサムジャク(敢えてオラウータンっぽい悪意に満ちたメイク)の他、

多くの著名な映画人の面々がチョイ役で出演しています。

個人的に「え?マジで?」と思ったのが、

キャンディランドで逃亡したniggerを捕える追跡者の一人を演じた

トム・サヴィーニ!!

特殊メイクの雄でありながら、スタントとして多くの映画に出演し

その度に死亡してきた彼。

今作では仲間と小屋でトランプに興じていた際、復讐に燃えるジャンゴに

正面からドテっ腹をぶち抜かれて無事、逝去となりました。

合掌…

 まとめ

特有の長回しやブラック・ミュージック、大掛りなスタント等を多用した

クエンティン・タランティーノという映画界の奔放児にしか

創れない無双の西部劇に仕上がっております。

 

冒頭の「続・荒野の用心棒」のメインテーマ、

そして二人がバディを組み、共に歩み始める場面で掛かる

Jim Croce - "I've got a Name"

がジャンゴにぴったりで泣かせます。

 

勿論、レギュレイターズの意味の無い掛け合いなどタラ調も健在です。 

西部劇のみならず、アメリカという国の内面にも迫った

映画人クエンティン・タランティーノ氏が魅せる新境地。

是非、御覧下さい。