血を吸う大地のよろずブログ

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「その後」を描いたタランティーノ渾身の西部残酷物語!!「ジャンゴ-繋がれざる者-」

あらすじ

奴隷に対する過酷な仕打ちが日常的に行われる南北戦争目前のアメリカ南部。

ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)が奴隷商人に連れられ、売り捌かれようとしていた道中、Dr.キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)なる男が現れる。シュルツは見た所は歯医者のようだが、果たしてその正体は敏腕の賞金稼ぎだった。奴隷商人を容易くぶちのめし、ジャンゴをその場から連れ出すシュルツ。 

シュルツは賞金首ブリトル三兄弟を探していた。その為、兄弟達の素性を知るジャンゴの助けが必要だった。旅を続ける内、ジャンゴも次第に賞金稼ぎの仕事に魅入られて行く。

ジャンゴに三兄弟を仕留めた後はどうするのか問うシュルツ。すると彼は、生き別れとなった妻、ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を取り戻すべくグリーンビル市に向かう事を告げる。だが、グリーンビルを擁するミシシッピ州は"黒人奴隷=nigger"に対する差別が特に根強い地域で、ジャンゴには危険過ぎる。

シュルツはジャンゴを諌め「冬の間に賞金稼ぎとして一緒に働く事」を提案。更に「充分に腕を磨いたら、君の妻ヒルディを一緒に取り戻さないか?」と、ジャンゴに思わぬ事を告げる。 

ジャンゴは米国じゃ取るに足らない"nigger"の一人に過ぎない。それなのに、何故そこまでするのかシュルツを問い詰めるジャンゴ。ドイツからの移民である彼は、奴隷制度に反対しており賞金首討伐の為とは言え、ジャンゴを連れ出した事に対し責任を感じていた。 

I have,I feel vaguely responsible for you.

私は君に、いくらか責任を感じている。

Plus,When a GERMAN meets a real life Siegfried,

That's kind of a big deal.

それにドイツ人が本物の『英雄』に逢ったんだ。

それって大した事だと思わないかね? 

Dr.キング・シュルツと"自由人"ジャンゴの奇妙な賞金稼ぎ二人組。かくしてブルームヒルダ奪還の旅が始まった。

タランティーノの暴力と手腕に翻弄され続ける脅威的な西部暗黒物語

オススメ強度:★★★★★

クエンティン・タランティーノ監督の稀有なバランス感覚が光る西部劇。アメリカ開拓の歴史に隠れた暗黒面を描写する一方、一大エンタメ映画として全体をドラマティックに引き締めている。実際、3時間という時間が短く感じるぐらい濃厚。

賞金首狩りをしながら、雄大な景色をバックに街から街への旅、本物の馬を用いたホース・スタント・アクション、血飛沫飛び散るガンファイト等々、王道西部劇要素をこれでもかと詰め込みながら、"nigger"が主役というブラックエクスプロイテイションの一面もある。

マカロニ・ウェスタンに対する氏のリスペクトも多くある一方で、奴隷制で虐げられ続けたアフリカ系移民の凄惨な歴史を辿るモンド映画的な側面もあり、単なる娯楽作とも一味違って、とても考えさせられる。終盤、Dr.キング・シュルツとジャンゴが銃を抜くカタルシスが素晴らしい…

アフリカ系がチョイ役でなく、『主役』としてふん張る西部劇という斬新さも然る事乍ら、敢えてゴア描写を強め、全面に押し出したプロットもまた骨太で、一度視聴したら忘れられない程。本作を前篇と後篇に分けるなら、

第一部『Dr.とジャンゴの出逢い、そして一流賞金首への成長を描いた冒険』

第二部『狂気に取り憑かれた農場キャンディランドの決斗』

といった構成。

大農場での決斗×2へ向け、じわりじわりと緊張感を上げる後半戦の構成力は流石の一言。一度目の決斗の後、「嗚呼…終わってしまった(´・ω・`)」と思ったら

「え?まだあるの!?ヤッタ━(゚∀゚)━!!」と歓喜したのは私だけじゃないハズ(笑) その点も大変Good!マカロニ・ウェスタンだったら、絶対あそこのカットで終わってますからね!

そしてジャンゴが馬屋に訪れ、別れを告げる場面は喪失感が凄まじく、とても哀しかった

作品解説

2007年辺りからタラちゃんが温めていた「奴隷問題+西部劇」というアイディア。しかし、

「デリケートでアメリカ映画史が避け続けてきた奴隷問題の描写」

「豊かな自然を背景にした西部冒険劇」

この二つを両立させる構想は、どうにもまとまらなかったらしくプロジェクトが本格始動するのは、イングロリアス・バスターズ完成以降となった。 

ジャンゴ役は当初、ウィル・スミス等にも打診されていたそうな。本作で彼を演じたジェイミーは黒く大きな瞳が虚ろにも見え、今まで数々の惨たらしい風景を見て来たであろうジャンゴという男により説得力を与えている。 

ジークフリート伝説に耳を傾け、朗らかな顔を見せたりもするが、全体的に寡黙で冷徹な印象のガンマン。もっともこれはシュルツと設定した『枠』の影響でもあるが、欲を言うなら更に色んな表情を劇中で観たかったかも…

そのDr.キング・シュルツを演じたのはイングロリアス・バスターズで一躍有名となった変幻自在の名優クリストフ・ヴァルツ。前作のハンス・ランダ大佐に引き続き、今作で再びアカデミー助演男優賞を受賞! 

シュルツはドイツ出身の賞金稼ぎ。元々は歯医者だったものの5年前に今の職に転向したらしい。賞金首の断定や手配書に余念が無いマメな性格に加え、劇中に登場する急進過激派「レギュレイターズ」の夜襲を予想しダイナマイトでこれを撃退するなど、かなり周到な人物。そして、様々な銃の扱いに長ける等、賞金稼ぎは天職だった模様。

西部おなじみの不意撃ちSleeveShotが印象的、かつケレン味溢れてて最高でした。 

クリストフ氏の役どころはイングロ以上に飄々とした人物。賞金首の討伐にも動じたり、気性を荒くする事もない。また奴隷のジャンゴにも優しく丁寧に接し、愛馬フリッツに礼をさせ、その場を和ませるドイツ紳士。ジャンゴ以上にセリフも多く、表情豊かに活き活きと演じている。

この映画はジャンゴの冒険のみならず、米国南部の恐ろしい側面に迫るDr.キング・シュルツの視点も含まれている。そして『枠』から遂に外れ、彼の憤怒が爆発するシーンは本作の見所のひとつ。

前作で恐怖のユダヤ狩りをオハコとしていたハンス・ランダ大佐に見事成りきったクリストフ氏が、今度は奴隷制度に反対し静かに怒れる老賞金稼ぎDr.キング・シュルツを熱演したという点もまた面白い。助演男優賞を不服とする評価もある所を見るに、それだけ今作のクリストフ氏に魅了された方も多いという事が分かる。

サントラではマカロニ・ウェスタンと言えばこの人と言って過言の無い、エンニオ・モリコーネ先生作の名曲を多く引用。本作の為の新譜もあります!

しかし、モリコーネ氏は常々暴力&ゴア表現嫌いで知られており、流血沙汰がとにかく多い本作にも同様に苦言を呈している。マカロニやジャッロの全盛時代も大概だったと思うんですけど…

驚愕したのがルイス・バカロフ氏(Luis Enriquez Bacalov)が手掛けた

"His name was king"

この曲、実はリチャード・ハリソンとクラウス・キンスキが主演したマカロニ・ウェスタンからの引用でした。御聞き頂ければ分かりますが、すんごくキャッチーで、とても1971年に創られた曲とは思えません(汗)

タラ映画ではKill-Billシリーズ等でも知られる彼。そんな彼のかつて名曲が、劇中で印象的に持ち入れられたのは何とも嬉しいサプライズだ。

また、西部劇でありながらアフリカ系のアーティストが多数参加。勿論、ジェイミー自身も名を連ねている。

Rick Ross - "100 Black Coffins"

は先程と同じく本作の為に創られた一曲で、かなりパンチ効いてます。

劇中においてジャンゴが袖を通す服や外套、鞭を振り回すシーン等は言わずと知れたかつての『ジャンゴ』フランコ・ネロ御大がベースとなっていると思われる。そして、なんと劇中の高級クラブ「クレオパトラ」で御大自身がカメオ!!二人のジャンゴが交錯する! 「名前は?」と聞き、続けて綴りも尋ねた後"I know..."とだけ超イカす低いヴォイスで答え、テキーラを傾ける場面が激渋!! 

実はカービン役としてのオファーもあったそうだが、フランコ御大側で都合がつかず御破算に。その代わりとして立てられたのが、容姿が若き日の彼によく似たレオナルド・ディカプリオ氏。

実際に若かりし頃の御大と見比べるとマジで似てますこの二人…

そして農場主カービン・キャンディ氏を演じたディカプリオ氏は狂人染みた演技ぶりを披露。niggerに対し、一切容赦の無い差別主義者として劇中に君臨する。そして本作の中でも特に語り草になったのが、以下のアドリブ場面。

晩餐の最後にブチギレた挙句テーブルを叩いた際、勢いでグラスが割れ手のひらがパックリ裂けるほどの切傷を負ってます。通常なら手当をしそうな場面なんだろうが、現場はディカプリオ氏の流血もそのままに撮影を続行。

その傷を使用人スティーヴン(サミュエル・L・ジャクソン)にまじまじと見せた挙句、ブルームヒルダ演じるケリー・ワシントンの顔にそのまま血を塗りたくるという渾身のアドリブ!!!

続くシーンでは持ってたハンマーを卓上にぶん投げてるけど、クリストフ氏が思いがけずマジビビり。やっぱスゲーわディカプリオ…

本作ではサムジャク(敢えてオラウータンっぽい悪意に満ちたメイク)の他、多くの著名な映画人の面々がチョイ役で出演。個人的に「え?マジで?」と思ったのが、キャンディランドで逃亡したniggerを捕える追跡者の一人を演じたトム・サヴィーニ!!

特殊メイクの雄でありながら、スタントとして多くの映画に出演し、その度に死亡してきた彼。今作では仲間と小屋でトランプに興じていた際、復讐に燃えるジャンゴに正面からドテっ腹をぶち抜かれて無事、逝去となりました。合掌…

 まとめ

特有の長回しやブラック・ミュージック、大掛りなスタント等を多用したクエンティン・タランティーノという映画界の奔放児にしか創れない無双の西部劇に仕上がっている。 

冒頭の「続・荒野の用心棒」のメインテーマ、そして二人がバディを組み、共に歩み始める場面で掛かる

Jim Croce - "I've got a Name"

がジャンゴにぴったりで泣かせる。 

勿論、レギュレイターズの意味の無い掛け合いなどタラ調も健在。 西部劇のみならず、アメリカという国の内面にも迫った映画人クエンティン・タランティーノ氏が魅せる新境地。是非、御覧下さい。

インフォ、キャスト、製作スタッフ等まとめ

原題:DJANGO Unchained

製作年:2012年

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

製作:レジナルド・ハロリン,ステイシー・シェール,ピラー・サヴォン

製作主導スタジオ:ア・バンド・アパート,ワインスタイン・カンパニー

製作国:アメリカ

登場人物

ジャンゴ:ジェイミー・フォックス

Dr.キング・シュルツ:クリストフ・ヴァルツ

ジャンゴの妻ブリュンヒルダ:ケリー・ワシントン

農場主カービン・キャンディ:レオナルド・ディカプリオ

〃の使用人スティーヴン:サミュエル・L・ジャクソン

〃の追跡者:トム・サヴィーニ

アメリゴ:フランコ・ネロ

('19 10/6 追記修正)