血を吸う大地のよろずブログ

映画&ゲームの感想ダラダラ書いてる

お客様は物体X!?深夜の変化球コンビニホラー『ダスク・オブ・ザ・デッド』をザックリとレビュー

もしも、チンケなコンビニに物体Xが現れたら?

オススメ強度:★★★★

'08年の10/31、全米がハロウィン一色の秋に公開された約90分のSci-Fiホラー。短いながらも手堅い演出、特撮と構成、そした演者さん方の演技の助けもあり、中々の仕上がり。期待せずに本作を鑑賞した当時、思いがけず衝撃を受けた事もあってこの評価。

乱暴にストーリーをまとめてしまうと、みんな大好き物体Xが南極ではなく、アメリカ南部のちゃっちいコンビニに夜中押し入ったらという内容。こう言い切ってしまうと粗方の予想が付いてしまいそうだが、パウロ・コスタンツォ、ジル・ワーグナー、シァ・ウィガムら主演を務めた御三方の演技が凄まじく、如何にも!と言った風なB~C級予算のホラーながら食い入るように魅入ってしまった。

特にシァ氏のそれは真剣そのもので、店内で"Lacey!!"と何度も絶叫したり、劇中で腕をぶった切られながらも終盤まで諦めずに策を講じたりと、冷静で情に厚い強盗デニスの奮戦ぶりを見事に演じ切った。本作におけるシァ氏の演技は、本人にも監督含む製作陣にとってもクリエイター冥利に尽きる仕事だったのではと感じる。

セス(パウロ・コスタンツォ)とポリー(ジル・ワーグナー)の二人は婚前旅行中のカップルで、オクラホマまで各地を点々としながら気ままに旅を満喫中だった。ところが、指名手配中の強盗デニス(シァ・ウィガム)とその連れでヤク中のどーしようもない女レイシー(レイチェル・カーブス)が現れた事で状況は一変してしまう。

車を占拠され、途中で立ち寄ったガソスタ併設型のコンビニ。しかし、どういう訳か店員の姿はどこにも見当たらない。そんな中、デニスの言葉も聞かずドラッグでスッキリしようとトイレに向かうレイシー。四人はすぐにでもコンビニを立ち去る予定だった。しかし、店の敷地には既に凶悪な先客が来訪していたのだった。

先にも書いたが、ジョン・カーペンター監督不朽の名作である「遊星からの物体X」の影響がかなり色濃い。

しかし、本作の"それ"は物体Xとはまた一味違った不気味さを追求し、中々のオリジナリティ。全容はやや不明瞭ながらもトゲトゲしい見た目、その見た目からは想像出来ない程の素早さ俊敏さ、エモノを喰らう為なら文字通り死に者狂いで追い立てる執拗さ、更に捕食シーンのえげつなさもあってかなり凶悪な印象。

また体が千切れても、そこから先が独立して動いたりと搦め手も得意らしく、劇中手首だけがピョンピョン飛び跳ねてコンビニのドアを叩いたり、店内をカサカサ駆け回った後に排泄(?)を始めたりと、シュールで独特のキモ可愛さが感じられないでもない(笑)

当然こんなバケモノを相手にする三人はたまったもんじゃない。専門家不在ながらも相手の出方を伺いながら観察し、コンビニ店内の道具を活用して逃げ道を模索する三人の様子はプレステ時代のバイオハザードを彷彿させてワクワクする。

それと三人の演出のバランスも良い。オタクっぽいセス、ブロンド美人のポリー、強面なデニスと見た目の個性もそこそこだが、ステレオタイプな雰囲気は廃され、三人とも真摯にバケモノとの死闘に臨んでいる。低温を感知出来ない事を知り、セスが店内の氷を全部使って無理矢理体を冷やし、店内を飛び出す場面に思わず息を呑む。

舞台がコンビニから動かないのでやや小粒な印象ではある。しかし、メインキャスト三人のリアルな演技、そして襲い掛かる異形の怪物の恐ろしさ禍々しさに圧倒される90分だった。とは言えB級ホラーではある為、そこまで身構えず冷えたビール片手にダラダラ眺めるのがベストかもしれない。

 

当時のホラー映画祭を総なめした、侮りがたい一作なんだが…

実は封切り当時、'08年度のホラー映画祭"Screamfest Horror Film Fes"でベスト構成賞、ベスト特撮、メイクアップ賞など全6部門で賞を獲得。*1更にその年のサターン賞にもノミネートされ、ギレルモ・デル=トロ監督の『ヘルボーイ-ゴールデン・アーミィ-』等、著名な監督らの作品とアワードを競っていた。

トビー・ウィルキンス監督は海外だとかなり著名な映像作家との事。あいにく自分は監督の作品はコレしか観た事が無かった。DVDには15分程度のメイキングも付属。撮影に当たって屋外のホンモノそっくりのコンビニを設営し、地下室などは別のセットで撮影したらしい。ほんのちょっとではあったが、メイクアップの様子も見応えアリ。

デニス役のシァ・ウィガム氏は90年代に役者の仕事を始めて以降、映画やテレビドラマに端役や脇役で出演、声優としてゲームやアニメにも参画する等、マルチに活躍なさってるベテラン。最近だと昨年の"JOKER"でアーサーを追う刑事バーク*2として、これまた印象強い役を担っている。

思いがけずバケモノスラッシャーのマスターピースとなった本作。しかし、国内配給は劣悪の一言。劇中でも印象的だった『棘』または『破片』を意味する原題"Splinter"を見事に無視し、ロドリゲス監督の大怪作にあやかってか『ダスク・オブ・ザ・デッド』とか言う訳分からん邦題を頂戴してしまっている。DVDパッケもダサ過ぎる点も見逃せない。こんな不誠実な配給してる内は映画ファンなんて増えるワケ無い。

*1:とは言え「どーせB級映画なんでしょー??」という消極的なバイアスから視聴を始め、鑑賞中にその堅実な造りに驚かされたという批評家も少なからず居たとは思う。自分もそうだったし…

*2:例の階段ダンスの最中、ドン引きしながら「アーサー!話があるんだ!」と話し掛ける画面右側の刑事。その後、電車内で彼がどうなったのかは言うまでも無い。