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「トレイニング・デイ」荒むゲットーの風景越しに描く、黒過ぎるマトリ研修

基本情報

原題:Training Day

製作年:2001年

監督:アントワーン・フークア

脚本:デヴィット・エアー

製作:デヴィット・エアー,ジェフリー・シルヴァー,ロバート・ニューメイア

製作主導スタジオ:ヴィレッジ・ロードショウ・ピクチャーズ

製作国:アメリカ

登場人物

ロス市警麻薬取締捜査官アロンゾ・ハリス刑事:デンゼル・ワシントン

新人「マトリ」のジェイク・ホイト刑事:イーサン・ホーク

ヤク密売人のロジャー:スコット・グレン

アロンゾの愛人サラ:エヴァ・メンデス

ヒスパニックギャングのスマイリー:クリフ・カーティス

麻薬取締課の捜査官ポール:Dr.Dre

ロスの検事スタン:トム・ベレンジャー

 あらすじ

早朝、ジェイクの家にベテラン麻薬取締捜査官アロンゾから電話が入る。

ジェイクは、交通課から麻薬取締課に異動となり

その日はマトリとして初めての出勤だった。

妻のリサに励まされ、合流場所のカフェに向かうジェイク刑事。

 

落ち合ったものの、ボスであるアロンゾは下品で支離滅裂な言動ばかり。

それどころかジェイクを脅し、無茶苦茶な要求をし始める始末。

面食らうジェイクを尻目に、アロンゾの行動は段々エスカレート。

 

パワハラ&モラハラしまくりの上司アロンゾに

右も左も分からないまま、良いように振り回されるジェイク。

しかし、次第にボスの黒いバックボーンが露わになっていく。

 

――I feel like Football-Tryouts.

「アメフトのトライアウトみたいだ」 

――I wish it was tomorrow so I'd know If I made the squad.

「今日が明日なら、スタメン入り出来たかどうか分かったのにな…」

果たして新人マトリ捜査官ジェイクは、無事に初日を終えられるのか。

レビュー『アロンゾの眼を通して露わとなる、アメリカ文化風俗の一面と不安定な治安』

オススメ強度:★★★★

天使の街ロサンゼルス。

その路地裏の一幕をスクリーンに描き出したクライムサスペンスです。

 

また監督アントワーン・フークア、そして脚本のデヴィット・エアー両名が

若き日々を過ごしたゲットーや、貧民区の日常を白日の下に晒す

真っ黒なヒューマンドラマでもあります。 

御覧頂ければ分かりますが、デンゼル・ワシントン演じるアロンゾが

あまりにも苛烈な個性で全編通して、強烈に異彩を放っております。

 

アロンゾは本来ならガンジャ持ちのガキ共を逮捕し、調書を取るべき事案に対し

そのブツだけふんだくって野放し、強姦未遂のチンピラも、

その場で暴行して放置などなど…「俺ルール」で街を闊歩。

 

それだけに留まらず、デタラメな令状でガサ入れして現金盗ったり

コカの売人をゲロ(物理)させて脅したり、密売人を故意に殺害した挙句、

同僚と口裏合わせて正当化したりと、完全にやってる事が悪徳警官のそれです。

 

しかし、アロンゾは単純な「悪の偶像」ではなく、車内でジェイクに話す言葉は

後ろ向きではあるけれど、何だか妙な説得力があり

良くも悪くもカリスマ性があると言えます。

 

イーサン・ホークの薄幸ぶりに、唖然とするほど驚嘆します。

常人の神経なら、即辞めるか交通課に戻りそうな程、ブラックな仕事場です(汗)

この演技が評され、アカデミー助演男優賞部門でノミネートされています。

ジェイクは主人公だったハズなのにどうしてこうなった

その後、「二枚目ながら壮絶に幸薄い男性」は彼の得意分野となりました。

 

あくまで「善玉」としてふんばるルーキー捜査官ジェイク、

そして自らの「悪の美学」に酔いしれ、我を貫かんとするアロンゾ。

二人の激突が本作の大きな魅力になっています。

また、徹底してドライに表現されたロスの情景も見所です。

本作&「ゲットーサーガ」について解説

アントワーン・フークア監督、

そして、脚本担当のデヴィット・エアー氏にとっても渾身の出来だった本作。

実際、デンゼル・ワシントンは本作の型破りで悪辣な演技が好評を博し

見事アカデミー賞を獲得しております。

 

しかし両者とも、まだまだ描写したい事が多くあった模様で

アントワーン監督は、イーサン・ホークを再び迎えて

「クロッシング(Brooklyn's Finest '09 米)」を

www.eartheblood-sucker.com

 デヴィット氏も監督として

「フェイク・シティ-ある男のルール-(Street Kings '08 米)」

「エンド・オヴ・ウォッチ(End of Watch '12 米)」 

www.eartheblood-sucker.com

をそれぞれ製作。いずれも大絶賛とは行かないまでも中々の好評を得ています。

 

上記の三作は今回紹介した「トレイニング・デイ」と合わせて

「ゲットーサーガ」と個人的に呼称しています。

これらの四つの作品は現地で暮らす、アフリカ系アメリカ人風俗を

デリケートな部分も含め、事細かに描く一方で

白人種の登場人物が、その独特な文化に戸惑う描写もあり

ブラックスプロイテイションともまた違った印象があります。

 

アントワーン氏、デヴィット氏の二人は

いずれも若い頃に過ごした、極貧にあえぐ街の表現に徹していますが

ギャングや悪徳警官、クスリを平然と売りさばく売人が

ここまで身近な存在なのか!と、平和ボケした自分にとってかなりの衝撃でした。

独特な発音や韻を踏みながらの罵倒など、アフリカ系市民の個性もまた特徴です。

アントワーン監督は、通常ならばNGになりそうなカットを

本編に起用したり、現場で突発的に起きたアイディアやアクシデントを

プロットに盛り込む事が多いそうで、本作で言うと

情婦サラのアパートに向かった際、アロンゾが執拗に彼女の尻を叩く場面等は

明らかに現場の悪ノリを、そのままOKテイクとして使ってますね。 

 

また劇中、サンドマンのカミさんチ(演じたのはメイシー・グレイ)に

ガサ入れを行った際、ジェイクが居合わせた子供のディミトリに

拳を突き出して場を和ませようとするも思うように行かず、

空気がうすら寒くなる場面は、もしかすると、演じたイーサン自身が

アフリカ系が多く住まう撮影現場に上手く馴染めず感じた違和感が元なのかも。

 

「トレイニング・デイ」の製作現場では、地元のギャングスタに許可を取り

彼らのテリトリー内で撮影をしていたそうです。

撮影当時、主演したデンゼルやアントワーン監督が

地元の子供達と積極的に交流していたそうで、

メイキングや完成後のインタビューでは、そんな撮影クルーの一面が語られています。

 まとめ

兎にも角にも、デンゼル・ワシントン氏のアロンゾが強烈過ぎるドラマ。

彼の熱演はこれまでの「善き人」としてのキャリアイメージを一変させました。

 

是非二回御覧下さい。

まず一度目はアロンゾの苛烈な豪胆さ、厚かましさを堪能し

次の二度目は彼がロスに訪れた意図、そして一日の時間経過を探ってみましょう。

 

たった一日の地獄のような「研修日」。もし自分がジェイクだったらと想像すると

街のドス黒さに呑み込まれそうで悪寒が走ります。 

 

今作では前述したメイシー・グレンの他、

DR.Dre、Snoop Dogg等、アフリカ系の著名なアーティストも参加。

サントラもまた素晴らしく、最近の動画サイト等でも頻繁にピックアップされ

製作から一五周年を経た今でも、熱烈に支持されております。

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