血を吸う大地のよろずブログ

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SCPを彷彿させる現代スリラー『Us』をザックリとレビュー

今回もまたジットリ不気味…

オススメ強度:★★★☆☆

ジョーダン・ピール監督の手掛ける長編映画第二作目。前作は全米に根強く残る『人種差別の怖さ』を超絶胸糞に描いたスリラー。そして今作"Us"では『格差社会』そのものにケンカ吹っ掛けてる。

ちなみに今でこそ映像監督として引っ張りだこなジョーダン・ピールだが、元々モノマネから業界入りしたコメディアン。彼の相方であるキーガン・キーとの公式チャンネル”Kee&Peele”では、色々とギリギリなギャグとスキットが大量に投稿されている。


White Zombies - Key & Peele

…散々言われてる事ですが、本当に同一人物ですか??

冗談はともかく、映画本編は頭から終わりまで不気味な空気が途切れず、かなり没入してしまった。真夏のビーチが舞台なのに、何でこんなに湿っぽいんだろう。中盤以降、道路にバタバタ倒れてる大量の死体、そして手をつなぎ列を成す赤服連中に唖然となる。ただ、怖さの感じ方はヒトによるとも思った。

またホラー、スリラー映画で度々観られる「なぜか主人公と一部の仲間だけ都合よく助かる」といったセオリーに対し、本作のオチで明かされるアデレードのその衝撃的な正体から、家族が助かった理由に明確な裏打ちがある様にも感じる。

あ、それとネタバレありきなんでご了承下さい。格差がテーマと書いたけど、まず劇中の白人一家とアデレード&ゲイブ夫婦の間に明確な差があり、そこから私達は「こっちの家は金持ちそうだな」「主人公一家はそうでも無いな」と感じると思う。

しかし、世の中にはそれよりも遥かに持ってない恵まれていない境遇のヒト達が大勢いて、その環境を本人たちが改善しようにも出来ない現実を"Us"では描いている。劇中で襲いかかって来る赤服達は地下施設で暮らしていた。彼らはラジコンみたいに勝手に動かされているだけで嫌であっても拒否出来ないし、まともな食事も与えられず、そもそもエスカレーターは下向きの一方通行だけなので、地上に辿り着く事すら出来なかった。

いざ地上に現れると赤服連中は殺戮の限りを尽くすが、よくよく考えると彼らは生まれてから死ぬまでずーっと持たざるままの弱者なので、被害者としての顔もあると思う。発端となったレッドの動機も、̪かなりの私怨雑じりだったが心境としては『無敵の人』のヤケクソに近いようにも感じる。

ちなみに劇中の"hands across america"は実際にアメリカで実施されたチャリティー・イベントで、赤服たちが実際に手をつなぐカットはいずれも壮観だったが、偽善者たちの自己満足を監督なりに嘲笑した風にも伺える。

また監督は「"Us"は表裏一体」「まさしく私達の映画」とも語っている。最近、マウントとか言う言葉が流行ってる(?)が、自分より惨めな境遇の他人を観て安心したりしてる現代人の浅さ、心の貧乏さを、監督は本作を通じて鋭く追及したのかもしれない。

もちろん現実に赤い服着た殺人鬼達なんて居ないが、ここ日本でも生活苦勝手な逆恨みからトンデモない猟奇事件に発展した例が多数ある。"Us"はわたし達。本作は決して不気味な絵空事でなく、相当現実寄りなスリラーだ。

一部のwebコミュニティーを熱狂させた"Us"

"SCP-Foundation"と言う、一言で言ってしまうと小説投稿コミュニティーが存在する。

そこでは「財団」が文明の崩壊を防ぐ為、脅威となりうる有象無象を監視、収蔵している…という体で、不気味でおどろおどろしかったり、逆にバカバカしい内容の様々なコンテンツが投稿されている。

kakimochibake.hatenablog.com

もちろん本作は監督オリジナルの物だが、無理矢理"Us"の内容をSCP的に言うなら、『Keter-class』が『収蔵違反』で流出して起きた結果みたいだ。

そんな訳で国内外のSCPファンが"Us"を観てかなり熱狂したらしい。本作はスリラーながら、オカルトっぽさとSFなバランスが丁度いい塩梅で、そこがまた「SCPの収蔵違反が現実に起こったら…」という雰囲気の一助になっている。


SCP: Dollhouse

ちなみに監督はJJ・エイブラムスと共に、まさかのクトゥルフ系ドラマ「ラブクラフト・カントリー」をプロデュース中。こちらも目が離せない。


Us - Official Trailer [HD]