ホントに殴り合ってばっかだな…
オススメ強度:★★★★★
※超ネタバレ注意!+今回はちょっと字数多めです!
日本は勿論、世界中の怪獣マニアやSci-Fiファン、そして特撮オタクが待ち望んでいた、超大物怪獣同士のデスマッチ・タイトルがようやっと日本にも上陸。と言うのも、新型コロナの影響下で本国アメリカでは当の昔に劇場公開+デジ配信で公開されていたモノが、ここ日本ではどうしても劇場興行をこなしたい東宝の意向もあり、スケジュールがズレにズレまくっていた経緯がある。
これから劇場で鑑賞予定だけど、手痛いネタバレを喰らいたくないと言う、そこの貴方! 絶対にamazon やyoutube で本作の検索をしない事!! いや、もうホントに冗談抜きでネタバレばっかである!!
結論、『日曜の昼に頭カラにして観るバカ映画として最適な一作だった』と断言して良い仕上がり。冒頭、オカルト雑誌『ムー』みたいな文言のラッシュと、ギャレス版ゴジラ、そしてKOMや髑髏島に登場した怪獣たちが映し出され
[DEFEATED] 敗北!!
[DEFEATED] 敗北!!
[DEFEATED] 敗北!!
の表示と共に、トーナメント上にゴジラとコングが向かい合う演出から「あ、これマジメに観てたらアカンやつだ」と確信。この頭悪い導入のおかげもあってか、かなりリラックスした気分で最後まで楽しめた。
思い返せばその昔、大人たちが何も無いスタジオに着ぐるみと大量の火薬、そしてフィルムを持ち込み、多様な怪獣達の映画を作っていた時代から幾数年。今度は、当時子供だった製作者たちが数十億のカネを持ち寄り、形や技術こそ違えどまたしても同じ映画を大真面目に作ってると思うと何か感慨深い物を感じる。ただ、個人的に思う所はもう少しゴジラに華持たせても良かったのでは??とも思った。*1
しかし、劇場を後にして、家でSNSをざっと見回していると
- 飽くまでコングの続編なんだし、ゴジラの演出も納得
- 今回のゴジラはアニメで言うと一期主人公がライバルになっただけだから
- ラストのトドメはともかく、コング相手には完勝してるし…
といった意見も観られ、なるほどなァ…と多少溜飲が下がった気分。単に怪獣同士の闘いだけで無く、地底アドベンチャーも盛り込んだ構成にもワクワクした。劇中のSF的なトピックはツッコむだけ野暮ってもんだろう。*2 また、ゴジラ組とコング組に分かれた人間サイドのドラマは、小栗旬以外は演じてる俳優さん方の個性も際立っており、思っていたよりもずっと良い塩梅だったと思う。
劇中、ジアが「家族なの?」と手話でアンドリュー博士に問いかけ「分からない」「そうだと良いと思う」と、博士が続け様に返すシーンは観終わってみると結構エモい(;∀;) 一方のゴジラ組は、ミリー・ボビー・ブラウン+DEADPOOL2のクソガキを演じたジュリアン・デニソンというサブカル層に突き刺さる配役にシビれる! と同時に急激に大人びたミリーの容姿にもシビれる!! なんとなくミリーが写ってる時だけ音楽も演出も'80~'90っぽいのはあの話題作の影響か。
KOMであんな目にあったのに、父マークとの関係はそこまで破綻してはいない様子で安堵する一方、やはり母親の血も色濃かったのか、今作のマディソンは前作よりも陰謀論者っぽさ、カルトっぽさが強烈である。個人的にショックと言うか驚いた点が、観てる最中ゴジラよりむしろコングに感情移入してしまってる自分に気付いた事。ここら辺は昨今のCGやVFX技術の進化の恩恵が凄まじいと実感。
全身の鎖を気にするコング。首輪を自力で引き裂くコング。ジアやアンドリュー博士を前に、手話を通して穏やかな顔を見せるコング。地底王国で無邪気に振る舞うコング。宿敵に対し、鬼の様に憤るコングと、とにかく表情豊かで見飽きない。一方のゴジラの表情も中々なんだが劇中で置かれてる状況ゆえか、ゴジラのオヤジさんは終始キレっぱなしである。
またKOMの時点で十二分に満足な出来だったモーキャプの表現も格段に向上しており、動作のリアルさは勿論、怪獣プロレスの迫力やスケールアップにも一役買っている。コングが放射熱線をいなしてしまう事に気付くと、次のラウンドで尻尾や噛み付きすら使い、インファイトに持ち込むゴジラの玄人ぶりに息を呑む。それと、上に※超ネタバレ注意!って注意書きした訳だし思い切って書きますが、この両者のバラエティ豊かな表情や戦闘シーンもあってか、メカゴジラの無機質さや生物っぽく無いロボらしい闘い方が対照的で個性が際立っていたとも感じる。
観る前から相当ゴジラ贔屓だったんだが、前述した通りで一度ゴジラとコングが対面すれば、とにかく殴り合まくり、熱線吐きまくり+最後には少年マンガ的な王道演出で幕を閉じる怪獣プロレス映画。今の子供たちにも、かつて少年だった大人たちにもオススメしたいド派手な冒険VS活劇だ。
止まない再撮影、進まぬ進捗
製作サイドは全体の筋書と構成を決めていた一方、試写会を繰り返し、その都度批判的な意見があればカットを没にし、シーンの再撮影を敢行するという、不毛と言われても仕方ない様な進捗計画で本作をまとめ上げたそうな。
芹沢博士(渡辺謙)の息子(?)の芹沢連を演じた小栗旬は、英語の習得が間に合わず製作陣に「時間が欲しい」と打診して了承を得たと明かしていたが、それも結局は遅延しまくってる撮影スケジュールのおかげだったのかもと邪推。*3一方、家族揃って$箱俳優という名門出身のアレクサンダー・スカルスガルドは一向に終わらない撮影もあってか「打ちのめされた」「オレ目当てで劇場に足を運ぶヤツは一人も居ない」とジョーク交じりとは言え、大変複雑な胸中を告白している。
根強いファンを抱え、長い歴史あるシリーズに挑むのはやはり困難の連続だ。とは言え、マニアが思わず感嘆するようなオマージュも多く、その点でも満足だった。
南極でコングを襲撃するゴジラの尻尾や首の皮がダレる演出は間違い無く『シン・ゴジラ』の意識した物だろう。メカゴジラの手のひらドリルパンチには恐れ入った。また劇中で暴走するメカゴジラの描写も、歴代メカゴジラの足跡を辿っている様にも感じる。消耗していたとは言え、ゴジラを一方的に痛めつけてる辺り、あの出来の悪いKOMギドラ三男坊にしては相当上手くやった方だろう… コングの方も、空輸されたり、電気ショックで息を吹き返したりとファンならば更に楽しめると思う。劇中に散りばめられた小ネタ探しも、また本作の魅力のひとつだろう。